新型コロナウイルスの感染拡大が深刻化を増す昨今、世界では日々多くの人々がその影響によって苦しんでいます。
そんな世界を巻き込んだ新型コロナウイルスのパンデミック騒動ですが、やはり待ち望まれているのはウイルスに対して有効なワクチンの存在です。
新型コロナウイルスに有効なワクチンが開発され、それが一般的に出回れば「経済優先か、それとも人命優先か」という議論にも終止符が打たれることでしょう。
しかし、実際のところワクチンの開発状況はどうなっているのか?という疑問もあります。
そこで、この記事では2020年12月時点におけるコロナワクチンの開発状況や使用実績などについてご紹介していきたいと思います。
また、いつになったら日本でも新型コロナウイルスのワクチン投与が始まるのか?日本でも使用可能となるにはどれくらいの期間が必要なのか?といった情報も合わせてご覧いただきますので、ぜひ参考にしていってください。
2020年12月時点でのコロナワクチンの開発状況について
現在のところ日本では新型コロナウイルスに対して有効なワクチンの開発があまり進んでおらず、他国のワクチンを頼りにすることが基本的な考え方となっています。
そこで、まずは世界におけるコロナワクチンの開発状況や使用実績について見ていきたいと思います。
コロナワクチンの開発競争で先頭を走るのは米製薬会社ファイザー
世界各国でおこなわれている新型コロナウイルスのワクチン開発競争ですが、他国より一歩リードする形となったのがアメリカの製薬会社ファイザーが手掛けるワクチンです。
もともとファイザーは早期からドイツの製薬会社であるビオンテックと共に新型コロナウイルスのワクチンを共同研究・共同開発していました。
そして、そのワクチンの効果・安全性がアメリカの「米食品医薬品局(FDA)」で認められた結果、現在多くの国から注目を集めるようになっています。
なお、このワクチンに関してはすでにイギリス・カナダ・バーレーン・サウジアラビア・アメリカで使用許可が出されていて、そのほかEU各国からも多くの申請が出されています。
このファイザー製のワクチンが新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐことになれば、一気にアメリカ・ヨーロッパの被害状況が改善されることでしょう。
そのため、いまもっとも世界中から期待されているのはこのファイザー製のワクチンと言えるわけです。
コロナワクチンの使用例は?アメリカやイギリスが投与開始
そんなファイザー製のワクチンに関してですが、世界に先駆けてもっとも早く一般向けの投与を決定したのがイギリスです。
2020年12月2日にイギリスでファイザー製ワクチンの使用許可が出されると、同月8日には一般市民へのワクチン接種が始まっています。
これに続いてバーレーンが許可を出し、その次にカナダといった順番でワクチンの使用許可が広がっていっています。
ちなみにカナダにおいてはファイザーとビオンテックが開発したワクチンに関して「安全性、有効性、品質の厳しい要件を満たしている」と発表していて、同ワクチンに大きな信頼を寄せているようです。
また、カナダでは12月中に最大24万9000回分のワクチンをファイザーから受け取る予定となっています。
そしてカナダが使用を許可した数日後の12月11日、アメリカでもファイザー製のワクチンの使用許可が発表されました。
アメリカでは新型コロナウイルスの感染者数が累計で1570万人を超えていて、死者数に関しても29万人以上と世界で1位の数字を記録しています。
こうしたこともあり、ワクチンの早期使用が待ち望まれていたわけですが、アメリカの政府関係者はこれに対して異例のスピード対応でワクチン接種に踏み切ることを公表しています。
アメリカは使用許可後24時間以内にワクチンの出荷を開始し、まず290万回分の供給をおこなうとしていて、医療従事者など感染リスクが高い人から優先的に受けられるようにするとのことです。
なお、多くの一般アメリカ人が接種を開始できるのは、早くて来年3月末から4月初めとされています。
このように世界では多くの国でワクチンの使用許可や実際の接種が始まっているのですが、気になるのは副作用や管理体制といった部分です。
そこで、次に新型コロナウイルスのワクチン使用状況から見える課題についてご紹介していきたいと思います。
ワクチンの使用状況や課題について
ワクチンの使用には効果と安全性が認められなければいけませんが、ここからはそうした情報について詳しく解説をおこなっていきます。
コロナワクチンの使用状況から見える課題
まずは先ほどから話に出てきているファイザー製のワクチンについて見ていきますが、アメリカの米食品医薬品局(FDA)ではこのワクチンの安全性について以下のような見解をみせています。
「ファイザー製のワクチンはコロナウイルスの遺伝情報を伝える物質を体内に取り込み、そこから免疫を作る仕組みとなっていて通常2回の接種を想定している。
2回目に接種してから7日後の予防効果が95%となっていることからも安全上は問題ない」
このようにアメリカでは自国とドイツの製薬会社が開発したワクチンに絶対の自信を持っているのですが、現在までの間にこのワクチンを接種したイギリス人2名が急性過敏反応のような症状を出しています。(2020年12月12日時点)
イギリスでは「重いアレルギーを持っている方は接種を控えるように」と呼び掛けていますが、そのアレルギーの明確な度合いについては分かっていません。
こうしたことからワクチンの接種に消極的な意見を出す医療関係者がいるのも事実です。
また、このファイザー製のワクチンはマイナス60℃~マイナス80℃の管理下では半年間その効果が保証されると言われていますが、2℃~8℃くらいまで管理温度が上がると5日間しか保存が効きません。
そのため、大量の冷凍施設を用意できる先進国では有効に使えるものの、東南アジアやアフリカといった発展途上国ではまだ大量のワクチンを保管しておけないといった問題もあります。
さらにワクチンを空輸するためには専用の冷凍設備を搭載した飛行機や空路の存在も必要不可欠です。
ちなみにファイザー製のワクチンの製造拠点はアメリカとドイツ、そしてベルギーとなっています。
ファイザーではこの3か国からワクチンを適切な温度で出荷するための保冷ボックスも開発していますが、もちろん現在の段階では世界中に行き渡らせるだけの数は用意できていません。
また、この保冷ボックスを管理できるだけの冷凍コンテナを自前で持つ国も少ないと言えるでしょう。
こうなるとやはり世界の国々においては自国でワクチンを開発するのがベストとなってきますが、なかなか上手くいっていないというのが現状です。
次に、そんなファイザー製ワクチン以外のワクチン開発状況を確認していきます。
各国のコロナワクチン事情
現在のところ、一般的に使用が認められるレベルの新型コロナウイルス用ワクチンはファイザー製のものしかありません。
このほか、もう少しで実用化に踏み切れそうなもので言いますとロシアの「ガマレヤ研究所」のワクチンが挙げられますが、現段階で使用許可申請をおこなっている国はないようです。
また、イギリスの大手製薬会社「アストラゼネカ」も一般使用まであと一歩のところまで来ています。
ちなみにこのアストラゼネカでは「ロシアのガマレヤ研究所のワクチンと組み合わせることで予防効果が向上しないか」という実験もおこなっています。
この実験が成功をすれば両社のワクチンが有効に使えるようになりますので、その期待は大きいようです。
なお、上記以外でも多くの国がワクチン開発には乗り出していますが、やはり治験結果やデータが十分でなく、各国の使用許可が下りるレベルまでには達していません。
一例としてはフランスの大手製薬会社「サノフィ」とイギリスの「グラクソ・スミスクライン」が共同開発を進めているワクチンは、当初2021年半ばに実用化予定でしたがその期間を年末まで延長しています。
また、オーストラリアではクイーンズランド大学がワクチン開発中にトラブルが発生したことによって研究をストップしました。
こうした事例を見ても、ワクチンの開発というのは先進国の技術を持ってしても非常に難しいということが分かります。
しかし、やはり日本人として気になるのは「それではいつから日本でワクチンが接種できるようになるのか?」という部分です。
そこで、次は日本のワクチン進捗状況にスポットを当てていきたいと思います。
来年には日本でもコロナワクチンが使用可能になるか?
ここからは日本でワクチンが接種できるようになるのはいつか?またどうやったら受けられるのか?ということについて解説をしていきます。
日本は来年6月までに6000万人分のファイザー製コロナワクチンを確保
現在までの間に、日本政府は6000万人分のファイザー製ワクチンを確保しています。
これは日本の総人口から考えるとおよそ半数に相当する数です。
また、12月11日付けのニュースでは、先ほどご紹介したイギリスのアストラゼネカ製のワクチンも1.2億回分確保したと発表しています。
こうした発表を見る限りは、一応のところ日本でもワクチンの数はある程度十分に確保出来ていると言えそうです。
ただし、アストラゼネカ製のワクチンに関してはもちろん治験データが揃わない限り使用が認められません。
これは、世界各国が使用許可を出しているファイザー製のワクチンに関しても同様です。
どちらについても日本の厚生労働省がその効果と安全性を認めない限り一般的には使用されないようになっています。
これに関しては副作用やアレルギー反応を考えると当然の準備期間と言えますが、その点を考慮した上でも先進国でもっとも承認作業が遅れているのは日本です。
ワクチンが一般普及するのは2021年10月ごろと推測
アメリカやイギリス、またEU各国は次々とファイザー製ワクチンの使用許可を出していますが、日本ではいまだにその目途すら立っていません。
こちらは2020年12月12日時点の厚生労働省ホームページ記載の情報ですが、ご覧のようにまったく何も決まっていないことが分かります。
2020年12月という早い段階からワクチン接種の許可を出したアメリカやイギリスでは、だいたい2021年の4月~6月ごろまでにかけて経済などが正常化すると見られています。
しかし、これに対して日本はワクチンの一般普及自体が2021年10月ごろになる見通しです。
そのため、完全に脱コロナが達成されるのも2022年4月ごろになると言われています。
これはイギリスの医療調査会社「エアフィニティー」が12月8日時点で発表したデータに基づく情報ですが、たしかにこのままワクチンの普及が遅れれば日本は先進国の中でもっとも立ち直りが遅い国となるでしょう。
なお、こうなると「それでは今のところワクチン接種に関して決まっている情報は何があるの?」と疑問に感じるかと思います。
そこで、現段階で厚生労働省が発表している「ワクチン接種の時期」と「どうやってワクチンを接種するのか」について、次に分かりやすくまとめましたのでご覧ください。
日本でのワクチン接種体制は?受けるにはどうしたらいいのか?
現在のところ厚生労働省が発表しているワクチンの接種時期や接種方法は以下の通りとなっています。
- ワクチン接種の時期は2021年前半から開始予定
- 使用予定のワクチンはファイザー製、アストラゼネカ製、モデルナ製(米バイオ医薬品企業)
- ワクチンを接種するための専用クーポンが発行される
- クーポンは住民票のある自宅へ送付される
- クーポンは高齢者や医療従事者から優先的に送付される
- クーポンが届いたらワクチン接種の予約をする
- ワクチン接種は住民票のある区市町村の医療機関または指定の施設でおこなう
- なお、クーポンを持参すれば無料でワクチン接種が出来るものとする
こちらが現状で決まっているワクチン接種に関する情報のすべてです。
具体的にいつ開始されるのか?ということは先ほどもご覧いただきましたがまだ決まっていません。
政府としては2021年6月ごろをワクチン接種の目安にしているようですが、東京オリンピックの開催可否や感染者の増加によっても大きく変わってくると予想されます。
ワクチン接種の時期が決まっていない以上はこれまで通り自衛に頼るしかありませんので、ぜひ有効なワクチンが受けられるようになるまで新型コロナウイルスに感染しないよう努めてください。
総括
新型コロナウイルスのワクチン開発状況や日本でのワクチン接種時期などについてご紹介してきました。
2020年12月からは多くの国がファイザー製ワクチンの使用を開始しようとしていますが、日本はまだ足踏みをしている状態です。
もちろんワクチンの効果や安全性が確実に担保されない限りは無理もないことなので、なるべく早くワクチンの承認作業が終わることを祈っておきましょう。