2020年5月下旬に緊急事態宣言が解除されたあと、感染者の増加があまり見られなかった6月を経て、7月にはまた第二波とも呼べる感染者の増加が全国で見られるようになってきています。
このことについて、政府や各都道府県の知事は「夜の街」での感染拡大防止を呼び掛けていますが、なかなか良い成果が挙げられていません。
その原因のひとつとなっているのがホストクラブです。
特に東京の新宿や池袋といった場所にあるホストクラブでは、毎日のように感染者が確認されています。
しかし、なぜこれほどまでにホストクラブでコロナウイルスが蔓延するようになってしまったのか?しかるべき対策は取っていなかったのか?といったところが大きな疑問であり、そして今後の課題のひとつです。
そこで、この記事ではホストクラブが発生源とみられるクラスターの事例などから、ホストクラブとコロナウイルスの関係性について解説していきます。
実際にホストクラブの現場ではどういった対策を取っていて、利用するにはどれくらいのリスクがあるのかなどもご紹介していますので、ぜひご覧になっていってください。
ホストクラブでのコロナウイルス感染状況について
まずはホストクラブが原因と考えられるコロナウイルス感染拡大の事例や、ホストクラブで働く人間たちの対策状況などを見ていきましょう。
ホストクラブが原因でコロナウイルスのクラスター(集団感染)が発生した事例
緊急事態宣言が解除された5月下旬以降、6月から7月にかけてホストクラブの従業員がコロナウイルス陽性反応だった事例というのはたくさんあります。
しかもその事例の多くは集団での感染となっていて、クラスター認定されているものが大半です。
たとえば東京都では、2020年7月6日に都内のホストクラブの従業員12名がコロナウイルスに感染していたことを発表。
また、埼玉県では同年7月8日に大宮区にあるホストクラブで合計22名となる集団感染者を出しています。
さらにホストクラブでのコロナウイルス感染の余波は、こうした首都圏だけに留まりません。
神奈川県の横浜市や大阪府のホストクラブ、また九州や北海道といった地方の繁華街でもホストクラブ従業員たちの集団感染が確認されています。
一部参考:
朝日新聞デジタル
https://www.asahi.com/articles/ASN786VHWN78UTNB00L.html
FNNプライムオンライン
https://www.fnn.jp/articles/-/58384
もちろん従業員がこれだけ感染しているということは、店内にコロナウイルスが蔓延していることにも繋がるわけですから、客側も無事でないケースが多いです。
東北地方の青森県はこれまでに累計感染者数が30人と比較的少ない地域なのですが、7月10日に新規感染者が発生。(累計感染者数は7月13日時点のもの)
この発生元になったのは、住所が茨城県となっている出張型性風俗店勤務の女性で、7月3日に東京新宿区にあるホストクラブを利用していたことが分かっています。
そして、ホストクラブを利用した翌日の7月4日から感染が発覚する7月10日までの間に青森市内で勤務。
この間に数十人の男性を相手に働いていたこともあり、同市内では感染拡大への懸念が大きくなっています。
こうした事例は非常に多く、正しく自粛・警戒をおこなっている方々の中にはホストクラブ自体を目の敵にする人も少なくはありません。
しかし、なぜホストクラブでコロナウイルスの感染者数が多くなるのか?
その理由について次に詳しく解説をおこなっていきます。
なぜホストクラブでコロナウイルス感染者が増えるのか?
まずホストクラブでコロナウイルスの感染者数が増える原因を下記にまとめました。
- 接客距離が近い
- 店内の換気状況が悪い
- 従業員同士が共同生活をおこなっているケースがある
- そもそもの危機意識が低い
- 体調が悪くても休めない、体調不良に気付かずに出勤をする
ホストクラブというのは女性を相手に接客することが主な仕事です。
働くホストたちは自分の話術やお酒の強さなどを強みにして女性へアピールしますが、もちろん顔というのも大事な要素のひとつとなっています。
そのため、マスクで顔を隠さずに接客するホストが多く、またそれを望む女性客も多いことが感染拡大の原因と言えるでしょう。
そして、ホストクラブというのは非日常感を提供する場なので、外からの明かりが入らないよう窓をすべて潰していることが一般的です。
そのため、換気が滞りウイルスが感染しやすい状況を生みだしています。
これだけでも十分に国が提示する感染防止ガイドラインに引っ掛かっているのですが、さらに悪い影響を与えているのがホストクラブの勤務体系です。
駆け出しのホストは給料が安いため、会社が借り上げるアパートやマンションに従業員同士で生活しているケースがあります。
もちろん感染リスクが高く、そして危機意識の低いもの同士が共同生活を送っているわけですから、ひとりが感染すればすぐに一緒に住む人間も感染するわけです。
また、そもそもがお酒を飲む仕事・徹夜をする仕事という前提があるので、体調が多少悪くても気付かないケースもあります。
さらに欠勤をすれば給与に響くため無理をしても働くといった悪循環が、ホストクラブでのコロナウイルス感染拡大を助長していると言えるでしょう。
ホストクラブを含めた「夜の街」への検査・支援の体制
ホストクラブでコロナウイルスの陽性者が多く発生している状況には、各自治体の検査・支援の体制も関係しています。
一時期よりも医療現場における切迫度が収まったとはいえ、今のところまだ普通の体調不良者には積極的にPCR検査がおこなわれていないのが日本の現状です。
しかし、ホストクラブなど「夜の街」に関連した人たちというのは、優先的にPCR検査が受けられるようになっています。
これは陽性者を早めにあぶり出して二次的感染を防ぐための措置なのですが、こうした絶対的な検査数の多さというのもホストクラブにおいて感染者数が増加傾向にあると言われる理由のひとつです。
検査をした人間が多ければその分コロナウイルス陽性者が増えるのも当然のことです。
ただし、もちろんこの検査体制に不満を唱える人たちもいます。
しっかりと自粛をした上で、通勤などを理由にやむを得ず感染してしまった人からすると、スムーズに検査と治療が受けられるホストクラブの人間は目の敵になってしまうでしょう。
そして、こうした点から疑問に感じる部分が「そもそもホストクラブではコロナウイルスの対策をしているのか?」という点です。
ホストクラブでのコロナウイルス感染対策について
ホストクラブでのコロナウイルス感染者が増えていますが、そもそもホストクラブの従業員というのは対策をおこなっているのでしょうか。
そこでいくつかの事例と共に解説をしていきたいと思います。
ホストクラブはコロナウイルス対策をしていない?
ホストクラブのコロナ対策について、先に結論から言います。
「ホストクラブというのはその商売の形からして、コロナ対策をしても無意味であることが考えられ、よって利用する上では一定以上のリスクがあることを理解するべき」
つまり、簡単に言えば「ホストに行くならコロナに感染するリスクがあることを承知の上で行きましょう」といった形となります。
なぜこうしたことが言えるのか?ということを解説していきますが、先にホストクラブでおこなっているコロナ対策の一例をご覧ください。
【ホストクラブでのコロナウイルス対策一例】
- 入店する人数の制限
- 従業員の手指消毒
- シャンパンコールの禁止
参考:毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20200630/k00/00m/040/228000c
これは新宿歌舞伎町でホストクラブを経営する男性が語るコロナ対策の一例ですが、ホストクラブではこのレベルでの対策しかしていないことが分かります。
しかし、これはけっしてホストクラブが悪いというわけではありません。
というのも、ホストクラブというのは商売の形式上、これくらいしか対策が取れないのです。
ホストクラブは男性従業員に対して女性客が密になりたくて訪れる場所です。
もちろん男女の仲を目指さずとも一緒にお酒を飲むことに楽しみを覚える女性客が大半となっています。
つまり、基本的にホスト側はマスクの着用をしません。
さらに、2メートル以上のソーシャルディスタンスを保つということも不可能です。
こうなるとコロナウイルスが感染するもっとも大きな原因である「飛沫感染」が防止できないわけです。
一応、ホストクラブ側は「シャンパンコールの禁止」など大声を出さないよう配慮はしていますが、普通に会話をして飛沫が掛かる程度の距離に従業員と客はいます。
そのため女性客側が感染者だった場合、ホスト側としては感染を避けることが出来ない状況にあるわけです。
もちろん反対にホスト側が感染者だった場合は高確率で女性も感染することになり、先ほど紹介したように共同生活をする者同士や、感染した女性がその後に他の人へうつすケースも考えられます。
こうした悪循環の中でホストクラブ内のクラスターは発生するのですが、これに対して国や自治体がどう対策を取るのかが重要となってきます。
ホストクラブへのコロナ対策?新宿区での「見舞金」や豊島区での「全員検査」など
このたび、東京の新宿区では2020年7月から区民を対象に「コロナウイルス陽性者に10万円の見舞金を配布する」ことを決めました。
なお、こちらは同年4月7日以前より新宿区に住所を持つ人だけへの対処となります。
世間ではこれに対して「ホストクラブなど夜の街の人間を優遇する措置」として反対の意見も挙がっていますが、正直その意見は正しくありません。
というのも、この見舞金はホストクラブの人間に限定したものではありませんし、逆に言えばホストクラブの人間がよく使う飲食店や小売店の方を守るための制度とも考えられます。
もちろん新宿区側からすると「ホストクラブ勤務のコロナ陽性者」を早期的にあぶり出して隔離させたい考えもあると思いますが、だからと言って必ずホストクラブの人間が10万円を貰えるわけではないということを理解してください。
そもそもこの見舞金は、歌舞伎町で働いていたとしても住所が新宿区になければ貰えません。
しかも今から住所を移しても貰えないわけですから、仮にホストだけに限って言っても「そんなに得だけをするような仕組みにはなっていない」ということが言えるわけです。
参考:日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXMZO61388680Q0A710C2L83000/
また、同じ都内では豊島区が区内の「夜の街で働くすべての人間」にPCR検査を受けさせるよう動きだしたというニュースも出ています。
これもホストクラブから感染を広げさせないための対策のひとつと言えるでしょう。
しかし、こうした行政の働きが活発化するということは、ホスト側からの自浄作用が期待できないことを意味しています。
これは、先ほど申し上げた「ホストクラブで行う対策には意味がなく、利用者の判断に任せるしかない」という結論を裏付けるものであり、ホストクラブを利用するすべての人に理解しておいてもらいたい点でもあります。
ホストクラブがすべきコロナウイルスの対策とは?
最後にコロナ禍においてホストクラブがすべきコロナウイルス対策を見ていきたいと思います。
とは言っても現実的に有効な対策というのはありません。
出来ることと言えば、
- 「グラスやマドラーは使いまわさない」
- 「なるべく客との距離を空ける」
- 「可能であれば客席にアクリル板を設置する」
といったことくらいです。
もちろん最大の対策は「店を閉める」ということなのですが、その点ではホストクラブ経営者兼タレントの方が「閉店」という勇気ある判断をしたことで少し話題となりました。
参考:ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/5a7a16d813db5fc2143534470cf3b3b82ea6a8d2
すべての経営者に出来ることではありませんが、こういったご時世になったからこそ商売替えをするというのもひとつの選択肢だと思います。
また、現実を考えれば各自治体の指示に従い、従業員のPCR検査を実施して、働かせる人数を限定するというのもひとつの対策です。
たとえば1週間働いたら1週間休ませる(様子を見させる・検査を受ける)といった対策を講じるだけでも、かなり感染リスクが下がるかと思います。
もちろん働く側は給与が減りますが、こうしたことも踏まえた上で「不安定な仕事」だということを理解するきっかけにもなるのではないでしょうか。
総括
最近ニュースでよく見る、ホストクラブにおけるコロナウイルス感染拡大に関する問題をご紹介してきました。
対策をおこなっているかどうかはお店ごとに違いますが、ホストクラブは根本的に感染リスクが高いということを理解した上で利用するしかありません。
また、ホストクラブで働く人間たちは自分から感染者を増やさないよう、なるべく自粛した生活を心掛けてもらいたいところです。