新型コロナウイルスの感染拡大が懸念される中、日々のニュースでも同ウイルスの感染状況を見聞きすることが多くなっています。
そんなニュースの中でもよく使われている言葉のひとつが「クラスター」です。
クラスターが発生したと聞くと「なんとなく今日は感染者数が多いんだろうな」といった感覚になるものの、実際にその正しい意味が分かっていないという方もいますよね。
そこで、この記事ではクラスターの定義を解説しながら、クラスターが発生することの問題点などについて詳しくご紹介していきたいと思います。
また、合わせて国内で発生したこれまでのクラスター事例もご覧いただき、今後自分たちがクラスターに巻き込まれない・クラスターを発生させないための予防策についても考察していきます。
新型コロナウイルスの影響で生活が一変したこの時代で、感染を広めないための知識をぜひ身につけていってください。
クラスターとは?定義や問題点
まずはクラスターの定義についてご紹介していきます。
コロナの影響下においては主にウイルスの集団感染が起きたときに使われる言葉が「クラスター」ですが、本来の意味には「塊(かたまり)」「群れ」「房」といったものがあります。
イメージとしては
- 「集団的に集まったもの」
- 「ひとつのものが群れをなすことで構成されるもの」
といった感じです。
この英語における「cluster(クラスター)」が語源となっているわけですが、クラスターというのは特に病気の感染者だけに使われる言葉ではありません。
クラスターは物質科学における「分子・原子」の構造や、IT分野における「コンピューターの複合体」などにも使われる言葉です。
そのため、元々はネガティブな意味を持つ言葉ではないということを最初に理解しておきましょう。
クラスターの定義
クラスターの基本的な意味を知った上で、コロナウイルスに関しての「クラスターの定義」を見ていきます。
まず、クラスターというのはひとりの感染者から複数の人間へ感染が広まること、またその感染が広まった集団のことを指します。
つまり、現状では「クラスター=感染者の集団」といった意味で使われることが一般的と言えます。
なお、これだけ感染が広まっているコロナウイルスですが、実際にはひとりの感染者から他の多くの人間に感染が広がるということはほとんど確認されていません。
疫学の現場では「ひとりの感染者からどれくらいの人間が感染するのか?」という数値を「(基本・実行)再生産数」と呼ぶのですが、この数値が高ければ高いほど感染力が強いウイルスとみなされます。
そして、コロナウイルスに関してはこの再生産数の数値が当初「2を上回る」とされていました。
再生産数が2を上回るということは1人の感染者から2人以上の感染者が出るということですから、つまりは爆発的な感染拡大が懸念される状態です。
しかし、日本においては緊急事態宣言のもと人々が自粛をした成果もあり、その数値が「1を下回るようになった」というデータも出ています。
参考:東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/351826?page=2
再生産数が1を下回ればいつかは感染の連鎖が終わりますので、感染症の対策としては十分と言えます。
そんな中、この再生産数の数値を引き下げるのを邪魔しているのが「クラスターの存在」となっているわけです。
ということで、次にクラスターが発生することによる問題点について見ていきましょう。
クラスターが発生することによる問題点
先ほども解説したように感染者1人あたりから広まる新規の感染者数が「1」を下回れば、自然と感染症というのは収まっていきます。
実際に国内のコロナ感染者のおよそ8割は他者へウイルスをうつしていないと言われていますので、本来であれば再生産数というのは1よりも大きく下回るようになっていかなければおかしいわけです。
しかし、それでも緊急事態宣言解除後の感染者数というのは日に日に増していっています。
この原因というのが、この記事のテーマである「クラスター」です。
ひとりの感染者から5人~6人程度、場合によっては数十人単位の感染者を出すケースがあることで、再生産数の下がり幅を大きく邪魔しているわけです。
また、クラスターが発生しやすい場所というのはいわゆる「3密のルール」が守られていないような場所です。
そうしたところで感染する人というのは、感染後に症状が出るまでの間、また同じような場所に出向く傾向があります。
こうするとさらにクラスターが連鎖することになりますので、感染者数というのはどんどん増えていってしまいます。
実際に7月以降の感染者の割合を見るとキャバクラやホストを始めとした「密になりやすい空間」にいた人(従業員・客)が大半を占めていますが、そこから職場や家庭への感染が広がり、現在では市中感染が止められない状況となっているわけです。
こうした感染の連鎖を止めるために、各自治体ではクラスターの発生源や感染者のルートを特定し、濃厚接触者を早めに割り出すことで2次クラスターの発生を防いでいます。
クラスターへの対策について
クラスターが発生すると各地自体の保健所などがその感染者たちの行動履歴を調べます。
そして、感染者が訪れた・接触したと考えられるお店や人物を濃厚接触者として認定し、PCR検査などを受けさせるようにしています。
このときに他の場所で感染者が出ていなければ追跡調査は完了です。
この時点でひとつ目のクラスター以上の感染拡大はなかったとみなすわけです。
しかし、ひとつ目のクラスターの感染者からさらに新しい感染者が発生した場合、さらに追跡調査をおこなわなければいけません。
こうなると保健所や各役所の人員だけでは調査が追い付かず、その間に2次クラスターが発生するといった悪循環に陥ってしまいます。
現在(7月下旬時点)、感染者数の数が著しく多い東京以外でも神奈川や大阪、埼玉や愛知といった地域で感染者数の最高記録を更新してしまっていますが、その背景にはこうした「クラスターの追跡が間に合っていない」という現状があるわけです。
つまり、これ以上クラスターが多く発生すれば自治体の調査能力の限界を超えるため、さらなる感染拡大が予想されるということですね。
ということで、ここまではクラスターの定義や問題点をご紹介してきました。
次にそんなクラスターの発生をどう防げばいいのか?というポイントについて解説していきたいと思います。
クラスターを発生させないために必要なこと
クラスターが発生することで感染力が強くないウイルスでも爆発的に広まってしまう危険性があるということが理解できました。
しかし、問題は「今後どうしたらそのクラスターをこれ以上増やさないようにするのか」という点です。
そこで、ここからはクラスターに対する予防や対策についてご紹介していきます。
自身でおこなうクラスター予防
結論から申し上げますと、現状でクラスターを予防する方法は「人が多く集まるところにいかない」ということしかありません。
もちろんこの人が多く集まるところというのは「職場」や「学校」も含まれます。
夜の街関連での感染拡大が懸念される一方、7月以降は職場や学校でのクラスターが頻繁に発生していることも事実です。
一例を挙げてみますと、学校関連では「横浜国立大学」の学生とその知人の合計6名がコロナウイルスに感染しているわけですが、横浜市はこれをクラスターとして調査しています。
参考:ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/49dcf7d14a860b881e34631cf643c29ac74740b1
このクラスターの発生状況を簡単に説明すると、運動系サークルに所属する学生が集団で飲み会をおこなったことが感染のきっかけと見られています。
その後、さらにその学生たちと交流のあった20代の女性が感染したということになっていますので、この事例がいわゆる「パーティークラスター」であることが分かるかと思います。
なお、仮にこの感染した学生たちと一緒に授業を受けた多くの学生たちも感染する事態となった場合、そのすべての学生たちの行動を正確に追跡調査するということはほぼ不可能と言えるでしょう。
つまりこのクラスターが発生したことによって、(この事例で言えば)横浜市にコロナ感染リスクのある多くの危険因子が市中にバラまかれたことになるわけです。
このような事態を引き起こさない・巻き込まれないためには、とにかく個人の判断で「人が多く集まる場所には行かない」という予防策を取るしかありません。
もちろん学校に行かない、職場に行かないというのは現実的に考えて難しいです。
そのため、個人では「マスクをする・換気をする・人との距離を取る」といった基本的な予防策しかおこなえません。
ちなみに「人が多く集まる場所に行かない」という対策は、緊急事態宣言下における規制・自粛と同じ行動です。
ご存知のように緊急事態宣言下においては確実に感染者数・クラスターの数というのは減っていました。
しかし、国がもう一度緊急事態宣言を発令することはないと言っていいでしょう。
これは経済的な問題や来年のオリンピック開催を視野に入れているからというのが大きな理由です。
つまり、今後は「国がクラスターの発生を防いでくれることはない」ということです。
こうしたことからも、クラスターへの対策というのは各個人でおこなうしかないと言えるわけですね。
身近でクラスターが発生したことを知ったら
先ほど一例に挙げたような学生の間でのクラスターを含め、今後自分の身の周りでクラスターが発生したらどうすればいいのか?という点も解説しておきます。
まず身近な人間がクラスターの当事者になった場合、自ら保健所に名乗り出て速やかに検査を受けることをお勧めします。
特に潜伏期間とみられる2週間前後の間に接触(近くで話をした、飲み会をした)があったのであれば、自身も感染しているかもしれないという意識を持つようにしましょう。
そうした行動を取らないと、次は自分がクラスターの発生源になってしまう可能性があります。
自分がクラスターの発生源になると住んでいる地域や環境、職業によってはその後の生活がしづらくなるケースもあるかもしれません。
このような観点からも、身近な人間が感染・クラスターに巻き込まれたことを知ったのであれば、自分もすぐに検査を受けることが大事と言えるわけです。
国内でのクラスター事例を紹介
ここからは、これまでに国内で発生したクラスターの事例をいくつかご紹介していきますので、予防・対策の参考にしてもらえればと思います。
なお、病院や学校といった発生を防ぐことが難しいクラスター事例はピックアップせず、あくまで個人の意思で参加した場でのクラスターを取り上げています。
新宿「劇場クラスター」
国内でのクラスター事例としてはおそらく最大規模となった東京・新宿での「劇場クラスター」では、これまでに関係者すべてを含めて115人以上が感染していることが確認されています。
もちろんこの数字はさらに増える可能性もあり、感染者の知人・友人は今後2次感染などに注意をしてもらいたいところです。
なお、クラスターが発生した劇場では対策を取っていたとされていますが、130㎡の会場に90人前後の客とその他の演者・スタッフがいたと考えると、クラスターが発生する条件は十分に満たしていたと言えるでしょう。
参考:東洋経済オンライン
https://toyokeizai.net/articles/-/364728
愛知「ホームパーティークラスター」
愛知県では若者によるホームパーティークラスターが報告されています。
こちらは県独自の緊急事態宣言が出された後に若者数十人が集まってパーティーをしていたことがきっかけとされていますが、その合計感染者数は実に22人とかなり大規模です。
県はこうしたことが起こらないようにと注意喚起をおこなっていますので、今後も室内で大人数が集まるような状況を作ることは控えた方が良いでしょう。
参考:ヤフーニュース
https://news.yahoo.co.jp/articles/23b122f3e57e530b0eb6417ba039848b54a1105a
大阪「バーでのクラスター」
一般的なバーでもクラスターというのは発生しています。
こちらは大阪府の東大阪市にあるバーでのクラスター事例ですが、これまでに20代から50代までの客あわせて12名がコロナウイルスに感染していることが確認されました。
お店自体の情報が公表されていないのでどれくらいのスペースだったのかは分かりませんが、キャバクラやホスト以外のお店でもクラスターが発生する危険があるということがよく分かる事例だと思います。
参考:日テレニュース
https://www.news24.jp/articles/2020/07/17/07682365.html
総括
コロナウイルスの感染によって発生する「クラスター」について、その定義や問題点などをご紹介してきました。
結局のところ予防する手段は
- 「人が多く集まるところに行かない」
- 「マスクなど基本的な対策を徹底する」
といったことしか挙げられません。
なお、多くのクラスターが発生すれば医療現場が困窮することになり、通常の医療すら受けられなくなる可能性があります。
そのため、ひとりひとりが自衛の意識を持って生活することが大切ということを理解してもらえればと思います。